2017年6月13日(火)
帝京高校対東久留米総合高校 その3
大変時間が掛かりましたが、マッチレポートを掲載します。
・・・ マッチレポート
大会名:平成29年度全国高校総合体育大会東京都大会一次トーナメント決勝C代表決定戦
試合日:2017年5月28日(日)
キックオフ:午前10時
会場:都立東久留米総合高校グラウンド
私立帝京高校対都立東久留米総合高校
・・・・・ 前半戦
前半早々チャンスを作り出したのは帝京。9番MF入澤大(2年)からのフリーキックに4番岡本良太(3年)がヘディングで合わせるが、東久留米1番GK澤田亜藍(3年)がファインセーブでゴールを許さない。
その後も帝京は3番DF柳大弥(1年)のロングスロー、10番FW佐々木大貴(2年)のシュートで東久留米ゴールへと襲い掛かる。序盤、ペースを掴んだのは帝京だった。
しかし9分、帝京ディフェンスライン裏のスペースへと抜け出した2番FW島村優志(3年)の放った強烈な左足シュートを皮切りに東久留米が少しずつチャンスを作り出していく。
東久留米のボールが繋がり始める。徐々にペースを掴んでいった東久留米は36分に決定機を作り出す。
帝京ディフェンスラインの裏へと抜け出した9番FW三上智哉(3年)が左足を振り抜く。帝京の守護神1番GK白井貴之の手は届かない。しかし、シュートはクロスバーに弾き返されてしまう。
前半スコア 帝京【0対0】東久留米
・・・・・ 後半戦
帝京のキープレイヤーは、10番佐々木、20番FW赤井裕貴(2年)、8番MF三浦颯太(2年)と言って良いだろう。
佐々木はプレッシャーを受けても前を向き、チャンスを作り出すパスを出すことが出来ていた。ここは帝京にとって計算通りだったはずだ。
しかし、最前線の起点としての活躍が望まれる赤井の前に東久留米14番DF小川大河(3年)、4番DF古川正悟(3年)が立ちはだかる。ロングフィードボールに対する空中戦、そして、足元での戦いでも赤井の攻撃力を低下させ、帝京にペースを掴ませない。
そしてもうひとつ、帝京にとっての大きな痛手は三浦颯太の戦線離脱だった。52分、司令塔が負傷退場でピッチを後にしてしまう。
流れを引き寄せたい東久留米だったが、今度は東久留米の突破のキーマンたちがピッチを後にすることになってしまう。裏への飛び出しからチャンスを作り出していたFWの島村と三上の交代を齋藤監督が申請する。理由は前半戦から繰り返し続けられたスプリント(試合中の短距離ダッシュ:秒速6,6m程度)の影響による足攣りだ。
東久留米の試合を長く観戦している人であれば、こう言う人もいるはずだ。「また足攣りか・・・」と。
「足攣りの理由について」私はこう思う。
東久留米グラウンドには数多くの観衆が足を運んでくれていた。多くの人に見られれば、人は緊張するものだ。また、今季、T1リーグからT2リーグへと降格した東久留米が、T1リーグ以上のチームと対戦した記録はない。強豪チームとの闘いは、選手たちに「目には見えないプレッシャー」を与えていたに違いない。更に、テンションを上げながらも「上げすぎない」というメンタルとフィジカルの調整を彼らは出来ていたのだろうか? これが出来なければ、筋肉は余計な収縮をし、本来の持久力を失ってしまう。その結果、起こり得る現象のひとつが足攣りだ。
とは言っても、安定したメンタルコントロールとパフォーマンスを見せていた選手もいた。(本人としては納得いかない部分はもちろんあったとは思うけれど、6番MF三浦聖選手3年生、良かったです)
けれども、トータルで見た時の私の見解としては、「場慣れしていないこと」と「絶対的な自信の不足」が彼らのパフォーマンスを落としてしまったかな、と思う。
緊張、スプリントの回数、暑さ、書き出せばまだまだ理由はあるだろう。高校3年間最後の1年は短いようで長い。2年間の蓄積は3年目の成長の大きな糧になる。3年目に迎える夏をどのように過ごすのか? それで未来は大きく変わるはずだ。
試合内容に戻ろう。
29分、帝京が決定機を作り出す。素早いカウンター攻撃から10番佐々木がドリブルで持ち込み、最後は中央でフリーになった4番岡本へとパスを出す。
完璧な場面だった。しかし、岡本の右足を離れたボールはゴールの枠を捉えることが出来ない。
残り時間4分、試合が大きく動く。東久留米が攻めれば帝京がカウンターを仕掛ける。双方チャンスを作り出すが得点には至らずに後半戦を終えた。
後半スコア 帝京【0対0】東久留米
・・・・・ 延長前後半戦
延長になってもお互いがゴールへと向かう試合展開となる。帝京は10番の佐々木、そして交代でピッチへと足を踏み入れた15番FW梅木遼(2年)がチャンスを作り出す。
対する東久留米は12番FW武田洸(2年)、20番FW須崎光将(3年)らが決定機を迎えるが結果を出すことが出来ず、勝負の行方はPK戦で決することになった。
延長前半 帝京【0対0】東久留米
延長後半 帝京【0対0】東久留米
合計スコア 帝京【0対0】東久留米
・・・・・ PK戦
PK戦のオープニングシュートを東久留米GK澤田亜藍が止める。ホーム東久留米にとってこの上ないPK戦のスタートとなった。東久留米グラウンドに大歓声が響き渡る。
二人目、三人目、四人目。各キッカーがネットを揺らしていく。合計9人が蹴り終わった時点での得点は4対4。
後攻の東久留米が決めれば試合は終わる。次のステージへと進むのは東久留米だ。
キッカーはキャプテンの8番MF下川晴(3年)。
ボールが足元から離れた後、両手を突き上げたのは帝京サポーターたちだった。守護神白井が見事な判断で帝京を救う。
6人目からのサドンデス。先行の帝京がゴールを決めていく中、16人目のキッカー、5番DF上山泰生(3年)がペナルティースポットへと向かう。
上山の放ったシュートを白井が止める。7対6。PK戦での勝利という結果を手に入れたのは帝京高校だった。
PK戦 帝京【7対6】東久留米
帝京 ×○○○○ ○○○
東久留米 ○○○○× ○○×
・・・・・
東久留米総合高校サッカー部監督の齋藤登氏がよく言う言葉がある。それは、勝負の行方がPK戦によって決定された時、東久留米が「勝っても」「負けても」、「試合は引き分けだった」という言葉だ。
物事の考え方や捉え方というものは、人によって異なる。齋藤監督にとってPKは、「PK戦」という試合とは異なった勝負なのだろう。
因みに私の考えも齋藤監督に似ている。何度も言ってしまうが、「物事の考え方や捉え方」は人の自由だ。だからこそ人生は面白い。
前回も書いたけれど、私は、あの「PK戦」という試合で「ボールを蹴れること」が本当に素晴らしいことだと思う。あの場面で決めることが出来れば、それは素晴らしいことだ。ゴールキーパーの立場から考えれば、あの場面でセービング出来るということは本当に素晴らしいことだ。しかし、シュートを決められなかったら。一度もセービングが出来なかったとしたら・・・。
良いことも嫌なこともある。何故、選手やコーチ、マネージャたちは、わざわざ苦しいことや嫌なことが起こり得ることに挑み続けるのか? それは、皆からすごいと言われたいとか、異性にモテたいとか、そんな小さなことの為なのか?
ジャンルは何でもよいけれど、本当の挑戦を続けている、或いは続けてきた人々が皆、口にする言葉を書いて今回のレポートを終了したいと思う。
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「あの感動を味わっちゃったら、嫌なことが本当にたくさんあるとは分かっていても、やめられないよね・・」
写真 笠井亨(かさいとおる)
写真・記事 早川治(はやかわおさむ)