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各試合の結果詳細をご覧ください。



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2017年10月29日(日)

第96回全国高等学校サッカー選手権大会 都立東久留米総合高校対東京朝鮮中高級学校 

マッチレポート
第96回全国高等学校サッカー選手権大会 東京都大会2次予選Aブロック3回戦
都立東久留米総合高校 対 東京朝鮮中高級学校
2017年10月29日(日)10時キックオフ
会場 都立東久留米総合高校グラウンド
試合形式 80分 延長20分 以後PK戦
天候 雨 気温 13.8℃ 湿度 100% 風 北北西2m

前半    都立東久留米総合 0-0 東京朝鮮
後半             0-0 
合計    都立東久留米総合 0-0 東京朝鮮
延前半            0-0
延後半            0-0
PK    都立東久留米総合 4-5
PK経過  1 2 3 4 5 6 7
東久留米   × × ○ ○ ○ ○ ×
東京朝鮮   × ○ × ○ ○ ○ ○ 

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 この1試合が行われる為に何人の人間が動くのだろう? 選手、スタッフ、マネージャー、審判、観客、ボールボーイ、高体連の方々、今は現役をしりぞいた指導者の方々、育成年代で指導に携わった指導者の方々・・・。書き出せばきりがなさそうだ。













 フットボールの試合には「試合結果」というものだけではまとめられないたくさんの要素が詰まっている。「たかがサッカー」という人もいる。ひとつのボールを追いかけて、相手のユニフォームを引っ張り、罵声を浴びせながら大声を出す。品のないスポーツだと言う人もいる。





 人は自由にいろいろなことを考えていい。自分の脳なんだから、自分が思ったことを考え、自分が気に入った答えを出していけばいい。



 反論する人はたくさんいる。けれども、「ひとつのボールを本気で追いかけたい」人々がここに集まっている。フットボールの魅力に取り憑かれ、頂点を目指し、日々努力と挑戦を続けてきた人々がここにいる。さぁ、聖地西が丘への切符を手に入れる戦いの始まりだ。



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「前半戦」

 先週同様台風が北上を続けている。台風21号の次は22号が南の海上から東京へと向かう大雨の中の定刻10時、主審のホイッスルがピッチ上の空気を引き裂く。



「9番に気を付けろ」試合前のミーティングで齋藤監督が指示を出した通り、東京朝鮮9番ハン・ヨンギへとボールが集まるが、東久留米ディフェンス陣も堅守でチャンスを作らせない。



 朝鮮のキーマンは9番ハン・ヨンギ。そしてテクニシャンの司令塔10番ムンインジュ。



 豪雨の中、この試合でも攻撃パターンというものはある程度決まったものとなった。それは「パワープレー的な攻撃の繰り返し」だ。





 東久留米陣内でスローイングの機会を得れば、ロングスローワーの6番ホンリジンが東久留米ゴール前へとボールを投げ込んでくる。



 ひとたびボールを奪えば、ハンヨンギへのボールが前線へとフィードされる。あとはボールのこぼれどころ次第というハードなゲーム展開で試合が進む。









 先に勢いを手に入れたのは東京朝鮮だったが、東久留米も譲らない。2番島村優志、7番小野寺竜也、19番渡辺倫太朗、13番中川高利らがゴールへと向かうが、朝鮮ディフェンダーたちも身体を張った守備でゴールを許さない。













前半スコア 【東久留米0対0東京朝鮮】

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「後半戦」

 後半開始早々東久留米が決定機を手に入れる。6番三浦聖からのフリーキックがゴール前の混戦から4番古川正悟の足元へと向かってくる。ピッチ状況を完璧に理解した古川のテクニカルなシュートが綺麗な弧を描いて東京朝鮮ゴールへと向かうが、ポストに行く手を遮られてしまう。





「ピンチの後にはチャンスがやって来る」。まさにその通りの場面が東京朝鮮に訪れる。左サイドからハンヨンギが放ったシュートが東久留米ゴールへと向かう。東久留米の守護神澤田亜藍の手は届かない。
 歓声と悲鳴が混ざり合う中、轟音がピッチ上に鳴り響く。今度は東久留米のクロスバーが東京朝鮮の前に立ちはだかる。



 双方全く譲らずの試合展開で試合が進む。両チームに当てはまる言葉は堅守。ボールはゴール前へと向かっていく。だが、ひとつのボールに対する互いの執念がゴールシーンを作らせない。

















 後半33分、この試合での大きな分岐点がやって来る。今試合、躍動を続けていた東久留米のダイナモ、7番小野寺龍也が負傷退場でピッチから姿を消してしまう。





 スコアは動くことなくトータル80分が終了。勝負は10分ハーフの延長戦へと突入した。

後半スコア 【東久留米0-0東京朝鮮】

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「延長前後半」

 延長に入っても図式は変わらない。シンプルな攻撃がメインの戦術で両チームがゴールへと向かうが、得点は動くことなく勝負はPK方式で決定することになる。















 延長後半終了間際、PK戦に突入する可能性の高さを予想した東京朝鮮ベンチが動く。東京朝鮮はゴールキーパーの交代を申請。好セーブを続けてきた1番チュウサンホンに代え、17番カンブラマを投入する。





 カンブラマは朝鮮選手たちの期待に十二分に答える結果を出すことになる。



延長前半スコア 【東久留米0-0東京朝鮮】
延長後半スコア 【東久留米0-0東京朝鮮】
合計スコア 【東久留米0-0東京朝鮮】

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PK戦



 最悪のピッチ状態は選手たちのキックの質を下げ続けた。軸足が滑り、シュートがバーの上を通過していく。押し出そうとしたボールが、水しぶきを上げたピッチに勢いを止められてしまう。



 最悪のピッチコンディションの中でも結果を出す選手たちのシュートがネットの形を変えていく。あれだけ動かなかったゴールネットが何度も揺れる。





 東久留米ゴールキーパー澤田亜藍、東京朝鮮カンブラマも存在感を見せつける。一進一退の攻防が続くPK戦は、双方5人ずつのキッカーでは決着がつかず、サドンデスの7人目まで行われることになった。



 サドンデス。東久留米7人目のキッカーはキャプテン10番の下川晴。



 下川の左足を離れたボールにカンブラマが好反応を見せる。ボールを弾き返したカンブラマがベンチに向かって大声で吠える。



 後攻の東京朝鮮がシュートを決めれば試合が終わる。15番ムンヒョンジョンのシュートは、一度はクロスバーに弾かれたものの、勢いを失うことなくゴール内へと吸い込まれていった。勝者は東京朝鮮中高級学校だ。





PK戦スコア【東久留米4-5東京朝鮮】

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 第96回高校選手権、都立東久留米総合サッカー部の挑戦は終了した。そして、20年余りに渡って東久留米の指揮官を務めた齋藤登監督現役引退の瞬間が訪れる。





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 頂点を目指して挑戦を続ける人々は、常人ではとうてい見ることが出来ない景色が見える様になって来る。高校サッカーというカテゴリーでの日本一という頂に足を運び、そこでの景色を見ることが出来る選手は全国の一握りの人間たちだけだ。

「素晴らしい景色」というものは、頂上まで登り切らなければ見ることが出来ないのだろうか?

 私はそうは思わない。一生懸命頂上を目指して登っていけば、様々な景色が目に飛び込んでくる。その道中では、今まで経験したことのない苦しい体験や、それを乗り越えた時に得ることが出来る喜びが待っている。ひとつひとつの困難を乗り越えた実績は、必ず自分の力になっていく。



 本気で見つめ続け、本気で走り続けた「あの時」は選手たちにとって、素晴らしい財産になるに違いない。

 夢中になる気持ちを忘れずに、これからも全力で走っていってほしいと思います。頑張ってください。心から応援します。

写真 笠井亨(かさいとおる)早川治(はやかわおさむ)
記事 早川治(はやかわおさむ)