2015年10月18日(日)
第94回全国高等学校サッカー選手権大会東京都大会2次予選の話 その3(写真付き)
西が丘への切符をかけた戦いが各地で行われました。早川は予定通りAブロック準決勝進出チーム決定戦のひとつ「都立東久留米総合高校(以下東久留米)対私立保善高校(以下保善)」の試合を取材してきました。僕にしては大変珍しく即日更新です。最近分かったこと、後回しにしたらもう無理です。だから今日アップ!! 以下マッチレポートです。
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第94回全国高等学校サッカー選手権大会
東京都大会2次予選 ベスト8
都立東久留米総合高校 対 私立保善高校
2015年10月18日(日)
会場:都立東久留米総合高校グラウンド
キックオフ:10時00分
「マッチレポート」
味の素フィールド西が丘。通称「西が丘」。東京都の高校サッカープレイヤーにとって、その天然芝ピッチでプレーをすることは、「憧れ」であり「夢」である。そう言っても過言ではないスタジアムだろう。
遠い過去から、そのピッチ上では数多くのドラマが生まれてきた。無理やり作り出したフィクションではない。紛れもない現実が、その大地で行われ続けてきたのだ。2015年11月7日、そのピッチに立つ選手たちが生まれてくる前、当時若者だった、ある先人は涙を流した。またある先人は、満面の笑みを浮かべてピッチを後にした。
「そんな時代知らないし・・・」と言う青年がいるとしよう。だが、彼は西が丘のピッチに立った時、紛れもない現実を目の当たりにすることだろう。積み重ねられた貴重な歴史が伝統となり、文化というまでの言葉になっているという現実を。
いざ、西が丘へ。Aブロック準決勝、用意された切符は2枚のみだ。
・・・・・ 「前半戦」
ボールが落ち着かない立ち上がりとなった。しかし、ただボールを蹴ってしまっているからではない。「西が丘への切符」をかけた戦いで緊張しない人間がいるだろうか? 「切符」の問題だけではない。この戦いが終われば、高校3年生にとっては、一般的には「引退」という現実が待っている。両チーム、調子が悪くなるのは当たり前の事だ。
東久留米は「らしさ」が出ない。「ボールを動かしながら、スペースを味方につけ、ゴールへと向かう」東久留米らしいパスサッカーはその姿を現さない。
対する保善は、NO8岡村翔、NO20加藤隼也、NO19藤原功明らが精力的に動き、東久留米ゴールへと向かうが、決定機を作るまでには至らない。
18分、先制点を奪ったのは東久留米。左サイドコーナーキックからのこぼれ球を、NO11武田海青が豪快に蹴り込み、保善ネットを大きく揺らした。
【東久留米1-0保善】
「足先でやるな!」「何で淡々とやらせるんだ!」東久留米齋藤登監督の檄が飛ぶ。先制点を奪い、勢いに乗りたい東久留米だったが、保善のペースは落ちない。ボールを繋ぎながらチャンスを窺う。
互いにチャンスを作り合う内容で試合は進んだ。カウンターから右サイドを東久留米NO9大庭諒介がドリブル突破し、チャンスを作り出すが、保善ゴールキーパーNO1内堀智裕がファインセーブでゴールを許さない。
保善NO11山下海利、NO9金子希史が東久留米ゴールへと襲い掛かるが、NO20宮崎紘也が懸命に戻り、シュートを打たせない。お互い譲らずに前半戦を終える。
前半戦【東久留米1-0保善】
・・・・・ 「後半戦」
後半に入ると少しずつ東久留米がボールを動かす場面が増えて来るが、保善も岡村、山下、藤原、加藤を中心に応戦する。
48分、東久留米に決定機がやって来る。右サイドを突破した武田がゴールキーパーと1対1の場面を作り出すが、守護神内堀が立ちはだかる。
内堀だけではない。保善は全選手が身体を張り、追加点を許さない。
しかし、今試合2回目のネットを揺らしたのは東久留米だった。右サイドからフィードされたボールに先制ゴールを決めた武田が中央で合わる。これには、再三ファインセーブを見せ続けた内堀の手が届かない。
【東久留米2-0保善】
時間が経過していく。試合を観戦していた方々にはこの後、どのような試合展開に観えたのだろう?
私にはこう観えた。保善のパフォーマンス、ハート、メンタルの部分は全く衰えを見せなかった。
2点差という僅差だったからだろうか? それは関係ないと思う。もし4点差となったとしよう。それでも彼らのパフォーマンスは落ちないはずだ。
日々、本気で走り続けてきた選手たちの眼は、どんな状況になっても死にはしない。そういう眼をした選手たちが揃っていた。全力で走る。バック走を繰り返す。身体を張る。シュートを打たせない。「俺たちは負けたくない。だから、絶対にゴールを決める」という意思が私の心に伝わってきた。素晴らしい選手たちだと思った。
得点だけの問題ではない。「俺たちは走り続けたんだ。だからそれを証明する」という気持ちは、ピッチ上で体現され続けていた。
その心は試合の流れを変えた。保善ペースの時間帯がやって来る。だが、得点を奪うには至らなかった。
保善加藤が右サイドを突破するが、東久留米ゴールキーパーNO1井上大地が的確な判断で前方へと出てシュートを打たせない。
中央からNO4粟津基大が強烈なロングシュートを放つが、この場面でも井上がゴールを許さない。
前後半合計80分、最後の最後まで全力で戦い続けた保善だったが、「西が丘への切符」を手に入れたのは東久留米。スコアは動くことなく、2対0で東久留米がベスト4へと駒を進めた。
後半戦【東久留米1-0保善】
合計スコア【東久留米2-0保善】
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勝つチームがいれば、負けるチームがいる。もちろん引き分けが用意されているレギュレーションであれば、引き分けもある。
敗戦で得るものは何か? 一言で言えることではないけれど、間違いない一言がある。
「敗戦は、また挑戦したいと思う貴重な種を、心の中に埋め込んでくれます」
選手たちの心には、常人には手に入れることが出来ない貴重な種が埋め込まれたはずだ。その種を大切に育て、素晴らしい芽を太陽のもとへと出し、成長させていってほしいと思う。
挑戦を続けていけば、本当に苦しくなった時、今回の種が、皆を助けてくれる時が、きっと来るはずです。
これからも頑張り続けてください。
写真:早川治(はやかわおさむ)・笠井亨(かさいとおる)
記事:早川治(はやかわおさむ)